筋トレやストレッチなどセルフケアに取り組んでも三日坊主で続かない・・・セルフケアの効果が出ない多くの人の課題は続けられないことです。そんな飽き性な人でも続けられ効果が出る方法をステップ by ステップでお伝えしていきます。
【STEP1】間違った思いこみをなくす
まず最初のステップは、間違った思い込みをすてるということです。どういうことかというと、痛みを繰り返し、なかなか良くならない人たちは、良くならないような考え方をしているということです。
例えば、安静にしていないといけない状態なのに、「筋肉が弱るから・・・」といって頑張って運動をしたり、食欲がないのに「食べないと元気にならないから・・・」といって、無理に食べていたり、自分では良いと思ってしていることが、結果的に体の負担になっていることが多くみられました。
これは、すべて間違った思い込みから発生しているか行動です。行動は、思考(考え方や価値観)から生まれます。
どれだけ適切な治療を受けていても、行動が間違っていては元も子もありません。そして、その間違った行動が習慣化することによって、痛みを繰り返してしまうのです。
そんな、間違った行動(習慣)を改善するには、体に対する正しい知識を身につけることが一番効果的です。
しかし、ほとんどの人は、体のことを学んでいません。なので、まずは信頼できる専門家を見つけて、そのアドバイスを受け入れることから始めてみましょう!
【STEP2】毎日の活動量を記録する
なかなか改善しない症状を、改善するためのステップ2です。それは、現在の状態をきちんと自分で把握するということです。
当たり前と思うかも知れませんが、症状が酷くなってくると色々なことが不自由になり、何が一番困っているのかが分からなる人が多いようです。
私のところに治療に来ていた患者さんで、痛みのある時とないときの差がすごく激しい人がいました。ある日、また痛くなって歩けない…と言って訪ねて来ました。「何か変わったことや無理なことはしなかったですか?」と私が聞いても、何も変わったことはしていないと、、、
なんで悪化したのか、悪化するタイミングを知るにはどうすればいいだろうと考え思いついたのが、毎日の活動量と痛みを記録するというものでした。
記録し始めてから1ヶ月。記録を見返すと、活動量の多い次の日に痛みがひどくなっていました。よくよく話を聞くと、活動量の多い日は買物に行っていて、決まってその翌日にひどくなっていたことがわかりました。
この方にとって買い物は、いつもやっている日常的なのことだったので、無理や変わったことをしたという意識もなかったということです。
このように、いつもの日常的なことが、体に負担をかけてしまっている場合はとくに気づきにくいので、感覚だけでなく、できるだけ記録することをおすすめしています。
特に、毎日どれくらい動いているかの活動量は、改善の目安にもなってくるので、活動量計などを使って数値化することをおすすめします。それが、自分で治すステップ2です。
【STEP3】痛みを見える化する
活動量計を使って、毎日の活動量を記録したら次は痛みです。他人に、痛みを説明するのに苦労したという経験が、あなたにもあるかと思いますが、一言で痛みといっても、その程度や種類はさまざまで、本人でないとわかりません。
そんな分かりにくい痛みを、客観的に分かりやすくするのが、ペインスケールという手法です。
ペインスケールについては、後ほど詳しく説明しますが、なぜ痛みを客観的にする必要があるのかというと、それは痛みこそ、あなたの悩みを解決する重要な手がかりになるからです。
私が、学び実践してきた中医学の古い医学書のなかに、痛みについて次の2つのことが書かれています。
それは、不通則痛(ふつうそくつう)=通じざればすなわち痛むと、不栄則痛(ふえいそくつう)=栄えざればすなわち痛むという2つの言葉です。
どちらも体のなかを流れる気血(きけつ)の流れが悪くなると痛みがでますよ・・・という意味では同じなんですが、
不通則痛は、気血は十分あるけど何かの影響で流れが悪くなっている状態(例えば水路にゴミが溜まって流れが悪くなっているようなもの)を、
それに対して不栄則痛は、気血そのものが少なくなって流れが悪くなっている状態を意味し、痛みの発生機序の違いを現しています。
これ、なんてことない違いのようですが、実は治し方と治り方が、全然違ってくるぐらい本質的な部分で、とても重要なことなんです。
なぜ重要かというと、体は、どんなときもベストな状態を維持しようと常に調節し働いています。そして、その力が強く働けばすぐに良くなりますが、力が弱いとなかなか良くなりません。
気血が充足していれば病を治す力は強く働き、気血が少なければ治す力が弱いということです。
慢性的に痛みがあるということは、後者(不栄則痛)に当たる場合が多く、痛みを見える化することで、ある程度それを見分けることができます。そこで役に立つのが、ペインスケールです。
ペインスケールとは、痛みの程度を客観的に見る物差しで、病院など医療機関では一般的に使われています。やり方についてとくに決まりはないのですが、主に次のような手法が使われています。
■ビジュアル アナログ スケール (VAS)
10cmの直線を引き、一番左端0cmの位置を、全く痛みを感じない状態と設定します。一番右端10cmの位置を、自分が想像しうる最悪の痛みとします。その条件で、患者さん自身が感じている痛みの強さに近い位置を、直線の上に印をつけてもらう方法です。
■ヌーメリック レイティング スケール (NRS)
痛みを0から10の11段階に分けて表します。全く痛みがない状態を「0」、自分が考え想像しうる最悪の痛みを「10」として、今感じている痛みの点数を聞く方法です。
■バーバル レイティング スケール (VRS)
痛みの強さを表す言葉を5段階に並べます。自分が感じる痛みを表す言葉として、どれが一番しっくりくるかを、患者さん自身に選んでいただく方法です。
■フェイス ペイン スケール(FPS)
人の顔の表情で、痛みを推し測る方法です。あなたの感じる痛みの程度を表す表情はどれですか? と質問して、患者さんに選んでいただきます。
このなかで、私がおすすめするのはVRSです。なぜかというと、自分で感じる痛みの表現(言葉)が使えて、評価の段階も5段階でNRSの半分だからです。
以前、私は院でFPSを使っていたんですが、10段階だと細かすぎてその違いが分かりにくいのと、評価時の気分など、痛み以外の要素が加わり、純粋に痛みだけの評価ができない可能性があるのでやめました。
それに比べてVRSは、5段階と少なくその上、痛みを自分の言葉で評価できるので、自己評価しやすいようです。
次は、VRSを実際に5段階にわける作業です。
この記事を読んでいるあなたは、普通に日常生活は行えているけど、日によっては、痛みで思うように動けなくなる。という方が大半だと思います。
もしあなたが、いつも痛みがあって、日常生活もままならないという場合でも大丈夫です。今からお伝えする方法で、基準を決めることができます。
①まず初めに、全く痛まない状態を0にしてください。
②痛みで起き上がることもできない、活動できない状態を5としてください。
③服薬や装具(コルセットやサポーター)をすれば動ける状態を4にしてください。
④痛いけど服薬や装具なしで動ける状態を3にしてください。
⑤少しだけ痛い状態を2にしてください。最後に、日中や普段は痛くないけど、夕方や疲れると痛くなる状態を1にしてください。
あとは、自分でしっくりくる言葉を当てはめて、毎日記録するだけです。
【STEP4】目標を決める
ペインスケールをつける準備ができたら、次は痛いことで何が一番困っているのか?ということを明確にします。
わかりにくければ、どんなときに痛いのか?その痛みがなくなって何をしたいのか?ということを考えてみましょう。
なぜ明確にしないといけないのかというと、患者さんが治療を受けに来る最大の理由は、とにかく今の苦痛から逃れたい!健康な体を手に入れたい!というものです。
でも、それだけでは繰り返す症状と縁を切ることはできません。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』と言うことわざがあるように、人は痛みがきつい時は一生懸命に努力します。でも、少し良くなると辛かったときのことを忘れ、今までと同じことを繰り返すからです。
以前に治療に来ていた患者さんの話しです。膝の痛みで歩けなくなって来院されたAさん、3ヶ月ぐらいかかって、なんとか普通に歩けるようになったので一旦治療を終了したんですが、しばらくすると、また膝が痛いと言って治療に来ました。
話を聞くと、痛みが酷かったときは、食事の量も少し減らし減量もできてたんですが、痛みがなくなると次第に運動量が減り、それと同時に食べる量が増え体重が前より増えたそうです。
このように、痛みや症状が繰り返し出るには何か問題となる悪い習慣があり、その悪い習慣を改善しない限り良い状態は続きません。
そして習慣を作るにはある程度の期間がかかります。だから「良くなって〇〇をする」など前向きな目標が必要なんです。
まずは、3ヶ月とか半年後にどういう状態になりたいか、短期的な目標を立て目に見えるところに貼って常に意識しましょう。
【STEP5】実践と評価をくり返す
慢性的な痛みを自分で治すために最も大切なことは、評価と改善です。
残念ながら医者は、あなたが思っているほど熱心に診てくれません。なぜなら医者にとってあなたの痛みは、あなた自身の問題で他人事だからです。
例えば、私が筋トレしてもあなたに筋肉がつかないのと同じで、あなたの毎日の行いが今の体を作っていることを意識してください。
なので、まずは今から伝える3つのセルフケアのうち1つだけでいいので実践してみてください。そして、活動量やペインスケールの変化を自己評価し、必要であれば、セルフケアの方法を見直してください。
■ 筋肉を整えるセルフケア
■ 腸を整えるセルフケア
■ 睡眠を整えるセルフケア
筋肉を整えるセルフケアというのは、筋トレやストレッチングのことです。腸を整えるセルフケアとは、腸内環境を整える食事のことです。睡眠を整えるセルフケアとは、睡眠の質を良くするための呼吸法などです。それぞれのやり方については割愛しますが、なぜこの3つなのかというと、どれも自律神経と関係があるからです。
痛みの中でも特に繰り返す痛みは自立神経との兼ね合いが深くそのことについては、【セルフケ基礎】「50代が取り組むべき3つのセルフケア」で詳しくお伝えしているので引き続きそちらをご覧ください。
【まとめ】
病院で治らない、繰り返し起きる痛みを自分で治すための方法を5つのステップに分けてお伝えしました。
ステップ1では、間違った思いこみをなくして、新たな価値観を受け入れるということをお伝えしました。ステップ2とステップ3では、具体的な行動として活動量計や、ペインスケールを使って今の状態を数値化して見える化することを、ステップ4では、ゴールを決めてモチベーションを維持することを、そしてステップ5では、評価と改善を繰り返しやり続けることをお伝えしました。
病院で治らない=不治の病ではありません。体には個体差があり、あなたの痛みが改善しないのは、自分の体のことを誰よりも理解していないことで、自分の体に合っていないことをしている可能性があります。
病院は、あなたの体のことを細く教えてくれません。学びましょう!自分の体の特徴を!知らないことで、あなたの健康が損なわれているとしたら、それほどもったいないことはありません。
次の第3章では、あなたが自分の体のことを誰よりも知るための方法について話しています。ワークシート形式になっていて、しっかり取り組んでもらえれば自分の体を誰よりも知ることができ痛みをコントロールしていくための指標を手に入れることができるでしょう!それでは第3章でお会いしましょう!